公開日:2022/11/29
最終更新日:2023/03/07

工数管理でプロジェクトごとの原価管理を行う方法

プロジェクトごとの原価管理

工数管理を行う上で重要な原価管理ですが、具体的にどのような流れで行えば良いのか、悩んでいませんか?
工数管理における原価管理とは、1つのプロジェクトにおいて労務費がどれくらいかかったのかを管理し把握するものです。
1つのプロジェクトを行う際には、労務費以外にも経費や材料費などがかかるため、工数管理によって労務費がわかれば、正確な原価が把握できます。
そのため、適切に原価管理を行えれば、そのプロジェクトがどれほどの利益がでているのかが明確になりますので、工数管理は非常に重要です。
本記事では、工数管理でプロジェクトごとの原価管理を行う方法や、そもそも原価管理とはどのようなものなのかをご紹介していきます。

 

工数管理における「原価管理」とは?

一軒家の建築にかかる原価

工数管理における原価管理とは、1つのプロジェクトを遂行するためにかかる諸経費のことです。
例えば、建築会社が一軒家を建てるとした場合、「人件費」「経費」「材料費」などがかかります。
これらすべての費用を足したものが原価となり、「受注額 - 原価=利益」と計算ができます
このように、工数管理を行うことで正確な利益を算出でき、プロジェクトの途中でも利益の予測が可能です。

 

工数管理でなぜ原価管理が重要なのか

工数管理によって労務費を算出し、その他の原価と足して受注金額と照らし合わせることで、実際にどれだけ利益が出ているか明確にできます。
しかし、工数管理をプロジェクトごとの工数把握で終わらせてしまうと、プロジェクトにかかる負担の確認だけとなってしまい利益の確認はできません。

また、実際にプロジェクトを行う際には見積もりの作成に想定原価を算出しますが、実際の原価を照らし合わせると想定範囲からずれている可能性があります。
このとき、どうして想定範囲内に原価が収まっていなかったのかを分析することで、次回以降の想定原価を算出する際により正確に作成できます。
そのため、事前に必要な原価の算出を行い、予想される利益をより正確にするためにも原価管理は非常に重要です。

 

工数管理が必要な業種

  • 建設業
  • 広告業
  • クリエイティブ業
  • コンサルティング業
  • イベント業
  • システム業

工数管理を行うことで、プロジェクトごとにかかる従業員1人ひとりの労務費を算出できます。
そのため、従業員の生産性が利益に直結する業種であれば、工数管理を行うことで正確な労務費を算出可能です。
例えば、建設業の場合は家を建てるのに従業員だけでなく、規模や進捗に合わせて外注で人を雇うことがあり、労務費が利益に直結します。
このとき、原価管理の中には光熱費や保険料なども含まれるため、正確な労務費と合わせて算出できれば、よりプロジェクトの利益を正確に管理できます。

 

工数管理で労務費を算出する方法は2つある

グラフとビジネスマン

  1. 標準原価を決めてリアルタイムで原価管理を行う
  2. 月次の実績工数を集計して実際原価を算出する

労務費の算出は、一般的にはリアルタイムの原価管理と、月次の実際原価管理の両方を行うのが最適です。
月次の実際原価までしっかり行うことで、次のプロジェクトで行う原価管理の参考にできるため、より見積の精度向上につながります。
しかし、月次の実際原価まで行うと手間がかかるため、リアルタイムの原価管理だけを行う場合もあります。

 

標準原価を決めてリアルタイムで原価管理を行う

従業員Aさんが月間180時間働いて給与が30万円の場合、プロジェクトA に80時間かけたのであれば、プロジェクトAにかかった労務費は13万円となります。

  • 総労働時間180時間÷80時間=2.25
  • 給与30万円÷2.25=13.333万円

このように、月次に実際にかかった給与と労働時間を集計し、各プロジェクトにかかった実際工数を算出することで、より正確な労務費がわかります。
また、標準原価と実際原価の差異を分析することで、標準原価の集計では実際とどれだけのずれがあるのかを把握可能です。
プロジェクトを進めている場合、予定通りに進まないことは多々あり、残業の発生や人手不足による人員補充などが発生します。
このように、どこで差分が発生したかを把握できると、予定工数の見積もり精度が上がり、見積もり時に適正な価格を提示できるようになります。

 

労務費には直接費と間接費がある

直接費 間接費
人件費 主要な従業員の人件費
外注の人件費
事務員の人件費
各種手当て
経費 従業員が使用する機材費 光熱費
保険料など
材料費 プロジェクトに必要な材料費 共通費(仮設事務所)
消耗品費など

原価には必ず直接費と間接費があり、直接費は数が明確に把握できる材料費や人件費などのことを指しています。
そして、間接費は売上に直接結びつかない業務のことを指し、人事部や総務部、情報システム部などの業務が該当します。
直接費と間接費に分ける理由は、間接費はメインでかかる費用ではないものの、プロジェクトにおいて必ず発生する費用です。
そのため、間接費を細かく算出することで、より精密な原価を把握できるため、正確な利益を知るために重要とされています。

 

間接費はプロジェクトの工数割合や部門ごとで割り振る

間接費には、光熱費や保険料などが組み込まれるため、正確な費用を算出しにくいのが難点です。
そのため、人件費のように1人あたりの金額のように個に対する費用が算出できないものは、配賦基準を設定して原価の計算に使います。
これは、間接経費の配賦(はいふ)と呼ばれているもので、算出しにくい費用に関してはこのように計算を行い、原価に含めます。

「間接費をプロジェクトの工数割合に応じて割り振る場合の例」

総稼働時間 間接費の割合
プロジェクトA 100時間 7
プロジェクトB 50時間 3

プロジェクトの稼働割合が多いということは、それだけ間接費も多いことになるので、総稼働時間に合わせて配賦される場合があります。
このとき、配賦基準は企業によって異なるため、慎重に基準値を決めていかなければなりません。

 

プロジェクトごとの原価管理を行う手順

ゴールに向かうビジネスマン

  1. 【経営企画】標準原価を決める
  2. 【管理者】プロジェクトを登録する
  3. 【経営企画】直接費と間接費の配賦基準を決める
  4. 【従業員】工数を入力する
  5. 【管理者】プロジェクトごとの原価管理を行う
  6. 【管理者】プロジェクトごとの実際原価を算出する
  7. 【経営企画】原価の差異分析を行い問題点を改善する

プロジェクトごとの原価管理を行う際には、7つの手順に沿って行っていく必要があり、ステップごとに携わる従業員は異なります。
例えば、最初の標準原価を決めるのは経営企画者が行い、次に管理者がプロジェクトの登録を行うように、それぞれ役割が変わってきます。
企業によって誰が担当するかは異なりますが、プロジェクトの「原価」を知るためには、部長といった上位役職者も工数管理に携わった方が良いでしょう。
ここからは、実際に工数管理システムを利用して原価管理を行う手順をご紹介します。

 

STEP.1【経営企画】標準原価を決める

役職 標準単価
役職なし 2,500円
主任 3,500円
係長 4,000円
課長 4,500円
部長 6,000円
本部長 7,500円

まず、経営企画の部署による、標準原価の設定を行っていきます。
標準単価は業種によって大きく異なり、役職に応じても変動するため、まずは「役職なし」「主任」「係長」など、それぞれの標準単価を決めましょう。
また、標準単価は企業によっては、一律とする場合もあれば、役職なしと役職ありで分けるなど、もっと大きな括りで行われることもあります
ただし、標準原価と実際原価の差分が大きいと、データの信憑性が薄れてしまうので、少なくとも「役職なし」「課長」「本部長」くらいには分けておくことをおすすめします。

 

STEP.2【管理者】プロジェクトを登録する

取引先と案件内容 プロジェクトコードの作成例
A社 住宅建設 AAAAA0001
B社 マンション管理 BBBBB0002

管理者は、実際に工数管理を行うプロジェクトの登録を行いますが、このときクライアントの案件ごとに分けて作成するようにします。
例えば、A社から住宅の建設依頼を受けた場合、「A社 住宅建設」というプロジェクトを作り、任意のプロジェクトコードを割り振ります。
取引先と案件ごとに登録することが多いため、取引先名や作業名の頭文字を組み合わせるなど、わかりやすいようなコードにすると管理しやすいでしょう。

 

STEP.3【経営企画】直接費と間接費の配賦基準を決める

●経営企画は、プロジェクトごとに直接費と間接費の配賦基準を作成し、精密な原価管理をできるように下準備を行う
一般的には、部門ごとにどれだけの売上を出したか把握する必要がありますが、1つのプロジェクトにはさまざまな部署が関わってきます。
そのため、部署ではなくプロジェクトごとに作成することで、より精度の高い原価管理を行えるようになります。
●間接費の配賦基準は企業によって異なるが、全プロジェクトの工数割合に応じて割り振る方法がある
例:「Aのプロジェクトが7割」「Bのプロジェクトが3割」の工数だった場合
間接費のプロジェクト工数が合計10であれば、Aのプロジェクトに7、Bのプロジェクトに3と、同じ割合で配賦を行います。

家を建てるとしたとき、実際に工事を行う部門の受注金額が「100%の売上」となるわけではありません。
仕事を受注した営業や、事務処理全般を行う総務・経理などが存在するため、プロジェクトごとに、どの部門にどれくらい配賦するのか基準を決めます。
例としては、建設に携わった部門が70%、営業に携わった部門が30%などと割り振りを行い、契約や振込などの事務処理は、間接費として扱います。
このように、プロジェクトの工数割合が多いと、それだけ間接費もかかっているはずなので、均等割ではなく、工数に応じた割り振りで配賦しましょう。

 

STEP.4【従業員】工数を入力する

プロジェクトコード AAAAA0001 BBBBB0002
作業工数 4時間 4時間
合計時間 8時間

ここでは、実際に従業員がプロジェクトごとにかかった工数(時間)を入力していきます。
このとき、単純にかかった作業工数だけを入力する方法や、1日の勤務時間にどのプロジェクトにどれだけの時間を費やしたか割り振る方法などがあります。
注意点としては、プロジェクトごとの原価管理を行う場合、勤務時間によって給与が変動しない管理監督者や役員の工数も入力が必要です。
管理監督者や役員は固定報酬なので、標準原価が決まっているため、労働時間によって費用が変わることはありません。
しかし、管理監督者や役員の工数を入力しないと、プロジェクトにどれだけの工数がかかっているかがわからなくなるため、できるだけ記載するようにしましょう。

 

STEP.5【管理者】プロジェクトごとの原価管理を行う

プロジェクト 主管部門 予定期間 参加者 参加人数 工数 金額
AAAAA0001 営業部 2022/11/01~12/31 山田太郎
鈴木花子
田中一郎
3人 10h 35,000円
BBBBB0002 経営管理部 2023/10/01~11/30 佐藤三郎
近藤愛子
2人 5h 15,000円

管理者は、プロジェクトごとの原価管理を行い、現状で従業員の負担が増えていないか、予定原価と相違がないかを確認していきます。
標準原価と予定原価を見ることで、誰にどれくらいの負担がかかっているのか、作業量がどの程度発生しているかが明確になります。
このとき、工数管理システムを導入すれば、プロジェクトごとにかかった工数の進捗管理が可能です。
プロジェクト別や部門別で閲覧できるため、従来の工数管理に比べると、管理者の業務負担は大幅に改善されるでしょう。

 

STEP.6【管理者】プロジェクトごとの実際原価を算出する

「従業員Aさんが180時間働き、給与30万円でプロジェクトにかけた時間が80時間の場合」
総労働時間180時間÷80時間=2.25
給与30万円÷2.25=13.333万円

管理者は、月次のタイミングで従業員それぞれの給与と総労働時間、各プロジェクトにかけた工数をもとに実際原価を算出します。
このとき、管理者ではなく経理部が行うこともありますが、会社によってさまざまなため、誰が対応するのかは事前に決めておきましょう。
そして、算出した実際原価と目標や予定として立てていた標準原価と照らし合わせ、どの点で相違が出ているのかを比較していきます。

 

STEP.7【経営企画】原価の差異分析を行い問題点を改善する

管理者により算出された「実際原価」を参考に、標準原価との差異を比較しながら、経営企画担当者が問題点を改善していきます。
例えば、配賦基準の変更や現場の業務フローの改善を行い、より精度の高い原価管理を行えるように調整します。
差異の比較を行うことで、クオリティは保ったまま、プロジェクトの原価をどのように下げれば良いのか、といった業務改善も可能になります。
従業員の負担も可視化されるため、よりよい環境で無駄を省いて業務を行うためにも、原価管理は重要といえるでしょう。

 

工数の原価管理はスモールスタートで始めよう

プロジェクトの原価管理を行う際には、あらかじめ複数のルール設定を行う必要があるため、原価管理を始めたばかりだと手間になることが多いです。
そのため、まずはいきなりすべての項目を完璧にこなすのではなく、スモールスタートで始めることをおすすめします。
例えば、最初は「プロジェクト設定」「標準単価設定」「工数入力」の3つのみで工数管理を行い、どの程度工数がかかっているかを確認します。
間接費の配賦ルール決めや、標準原価と実際原価の差異分析は行わなくても、プロジェクトごとの大まかな工数がわかるだけでも業務改善につながります。

弊社の提供するOZO3工数管理では、プロジェクトごとに作業時間を行えるため、細かく原価管理を行えるのが特徴です。
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標準単価を設定することで、労務費の概算も把握できるため、手軽に工数管理を行いたい方は、ぜひお問い合わせください。

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柏倉優

Webマーケティングの経験を経て、2021年6月に株式会社ITCSへ入社。 記事の企画・執筆・デザイン・アクセス解析まで幅広く担当。 皆さんに「それが知りたかった!」と思ってもらえるような情報を提供できるよう、日々勉強しています。

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